夕べの夢(蚊取り番)


シーンと静まりかえった部屋に…

秒針を刻む音だけが聞こえる午前1時。

 

奥さまの眠る布団の横に座り、蚊をはらうのが私の仕事。

 

 

元々私は、ご主人の介護の為にこの家に来た。  

ご主人が亡くなって…

仕事を失った私を不憫に思った奥さまが、そのまま雇ってくれた。

 

私の仕事は、その日から「蚊取り番」。

奥さまが快適に眠れるよう、蚊がきたら取る。

 

 

「ぷぅ~ん!!!」

 

どんな小さな音でも聞き付けて…

寝ている奥さまが目を覚まさぬように、静かに蚊を取る。

 

でも今は、12月。

蚊は、いない。

 

 

 

「カチ・カチ・カチ…」

 

夢の中の私は、時計の音に合わせて数を数えてみる。

1分という時間の長いこと、長いこと。

 

 

 

奥さまの寝顔を見ながら考える。

 

「奥さまの気持ちは、ありがたい。でも、このままでいいのか?」

 

 

 

しびれた足をくずしながら、また考える。

 

「ご主人の介護はたしかに大変だったけど、毎日が充実してた。

今は、こんなに楽な仕事をやらせてもらっていても、毎日が辛い。」

 

 

奥さまは、本当によくしてくれる。

夏以外は蚊がいないのに、お給料をくれる。

ただの一度だって、滞ったことはない。

 

 

「どうしよう。」

「どうしたらいいんだろう?」

 

 

今夜も…

時計の音だけが聞こえる長い夜がはじまる。

 

 

 

 

 

 

「やりたくないことをやめる」

 

夢は、そう教えてくれた。

 

 

ありがとう。